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舞台坂の向こうへ

あの坂に行けば、希望は見つかる。

部屋にビーズが落ちている。

部屋にビーズが落ちている。

まるで大きな大きな宇宙の中に、ひっそりと輝く星のようにそれはそこにあった。たった一つのビーズが、冷えきった部屋のど真ん中にあった。

あまりにも可哀想なので僕は手を伸ばした。だってなんにもない部屋で1人ポツンといるんだもの。部屋から出してあげたかった。

「やめて!」

ビーズは叫んだ。

「私はこの部屋にいたいの。」

「ほかの誰とも関わりたくないの。」

「閉じこもってる方が幸せなの。」

まるでマシンガンのように言葉が襲ってくる。

「君は輝いている。外に出ないのはもったいない」

僕はビーズの言うことを無視してそう言った。

 

長年自然界にろ過された水のようにビーズは美しかった。1人でそこに存在してるビーズが強く、美しかった。原石でもなんでもない。本物の宝石のようだった。外に出ればあっという間に皆から愛されるだろう。外に出れば世界が変わるだろう。なのに、なのになぜビーズは外に出ようとしないのか。僕は不思議だった。

 

「怖いの、、、みんなの目が怖いの、、、」

5分の沈黙をビーズが打ち破った。

「怖い?みんな優しい人だよ」

「優しくなんかない」

「面白い人もたくさんいる」

「私の周りにはいない」

「なにより楽しいところだよ外は」

「ここにいるほうが楽しい」

「、、、そうか。なら一生そのままでいろ。一生独りでそこにいやがれ。誰とも交わらないこの部屋で死んでいけばいい。お前は宝石でもなんでもなかったな」

僕は暴言を吐いてその部屋を出ようとした。

「待って、、、」

「なんで、なんでそんなに私のことを心配してくれるの」

ビーズは泣きながら叫ぶ。

「だってもったいないだろ。君のような美しいものがこんな部屋で1人、、、ポツンと、、、。」

追うように僕は話す。

「たしかに酷い人もいる。バカにしてくる人もいる。悪口しか言えないような人もたくさんいる。そういうやつは大嫌いだ。でもな、そんなやつらのことをいちいち気にして自分を殺してるようなやつのほうがもっと嫌いだ。自分の可能性に気づけ。そして自分の可能性を信じろ。君はサイレントマジョリティーに成り下がるのか?もっと、もっと自分自身を好きでいてほしいんだ!」

 

僕は熱くなっていた。冷たい水をかけられても蒸発するくらいに。ビーズが何かを言おうとしていたが、僕は聞く前に帰った。恥ずかしかったのかもしれない。

 

それから5年の時が経った年の大晦日。僕はテレビを観ていた。ずっと、その一瞬を、待っていた。終わる頃には泣いていた。え?何を見ていたかって?

 

アイドルだよ。

正真正銘のアイドル。

だって、

だって「彼女」が出ていたんだから。